ある冬、同じ班で小さなヒヤリが立て続けに起きた。
だが誰も報告しない。問いただしても「大したことないっすよ」と笑って終わり。
その空気の中で、自分もつい黙った。
「報告すると、面倒くさい」「怒られる」――そんな雰囲気が出来上がっていたのだ。

この“言えない空気”こそが、心理的安全性が欠けた職場の典型。
いくらルールを守っていても、心の安全が確保されていなければ、本当の安全は守れない。


■ 心理的安全性とは?

「心理的安全性」とは、職場で自分の意見やミスを話しても、否定・攻撃されない状態のこと。
Googleの「プロジェクト・アリストテレス」で注目された考え方で、
チームが成果を出すための最重要要素とされた。

現場では特にこの心理的安全性が欠けやすい。
・怒鳴る上司が多い
・ヒヤリを報告すると責任を取らされる
・ミスより“空気”を気にする
こうした職場では、危険を見逃しやすくなり、チームの力も下がる。


■ 心理的安全性の「4つの因子」

心理的安全性を高めるためには、4つの因子を意識することが基本になる。
これは石井遼介氏(『心理的安全性のつくりかた』)が提唱するフレームワークで、
職場や現場にもそのまま応用できる。

因子 内容 現場での具体例
①話しやすさ 意見・質問・報告がしやすい雰囲気 「ちょっといいですか?」が言える空気
②助け合い 困った時に支援し合える関係 忙しい時に自然と手を貸す
③挑戦 新しい提案や改善を試せる風土 「こうしたら安全かも」を否定しない
④安心して失敗できる ミスを責めず、原因を共有できる 「次にどうするか」をチームで考える

この4つの因子がそろって初めて、「心理的安全性が高い職場」と言える。


■ 現場での「心理的安全性のつくり方」

「心理的安全性のつくり方」は、決して難しいことではない。
リーダーやベテランが少し意識を変えるだけで、現場の空気は驚くほど変わる。

  1. まず自分のミスを隠さない
     → 上が率先して「ここは自分も焦ってた」と言うと、安心感が生まれる。

  2. “怒る”より“聞く”を増やす
     → 「なんでやった?」ではなく「どうなってた?」と尋ねる。

  3. 感謝の言葉を口に出す
     → 「ありがとう」「助かった」が習慣になると、報連相が自然に増える。

  4. 小さな意見も拾う
     → 若手の一言を笑わずにメモするだけで、挑戦の因子が動き出す。

これが現場流の「心理的安全性のつくり方」だ。
リーダーシップ研修よりも効果があり、職場の雰囲気を根本から変える。


■ 心理的安全性のある職場が「安全な職場」

心理的安全性は“ぬるさ”ではない。
むしろ、誰もがミスを報告できる厳しさを持つ環境のことだ。
「怒鳴らない」「隠さない」「助け合う」――これが安全文化の根っこ。

心理的安全性が高い職場ほど、ヒヤリハットが減り、
報告の質が上がり、離職率も下がると言われている。
つまり、“心の安全”は、“職場の生産性”にもつながるのだ。


■ 現場マンへの一言

「ご安全に!」の前に、
まず「ご安心に!」が言える職場をつくろう。
安全とはルールではなく、人と人の信頼関係で成り立つものだ。

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