
見られているだけで手元が狂った日
ある作業で、クレーンを操作していると後ろに作業長(リーダーの上:偉い人)が立っていた。
おそらく吊り荷の状態がきになり見ているだけなのだが、
なぜか急に手元がぎこちなくなり、普段絶対にしない小さなミスをした。
ノッチの入れ間違いである。
鎮めたい心と裏腹に振れる吊り荷、響き渡る吊り荷と障害物の接触音。
その瞬間、背中が冷たくなり、
心の中では「やらかした……」という感覚。
いわゆる 生きた心地しない というやつだった。
あとで振り返ると、
あの日のミスは技術不足ではなく 評価されている感によるものだった。
そしてこれは、 仕事でミスが多いと感じて落ち込むベテラン でも起こる。
むしろ経験が長いほど「下手に見られたくない」という思いが強くなるため、
注意資源が評価に取られやすい。
今日の研究テーマ
「他人の評価を気にするとミスが増える理由」
(社会的促進/評価懸念/注意の分散)
結論(簡単に言うと)
人は「見られている」と感じるだけで、
注意力の一部が “どう見られるか” に奪われる。
その結果、
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手順が飛ぶ
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手元が乱れる
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判断が浅くなる
→ ミスが増える
これは脳の仕様であり、性格や経験とは関係がない。
背景にある理論
◉ 社会的促進(Social Facilitation)
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Zajonc(1965)の研究
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人は見られることでパフォーマンスが上がる場面もあるが、
複雑作業や慣れていない作業では逆にミスが増える
現場作業は複雑作業なので、後者が圧倒的に起こりやすい。
◉ 評価懸念(Evaluation Apprehension)
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コトレル(1972)
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「失敗を見られたくない」という心理が働くと、
注意が二分され、集中が途切れる
特に
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仕事 ミス 落ち込むベテラン
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完璧主義者
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やらかした経験がある人
は評価懸念が強くなりやすい。
◉ 注意資源の分散(Cognitive Resource Allocation)
注意力には上限があるため、
「評価を気にする=余計なタスク」が脳に追加される。
すると、
本来100%使えるはずの注意力が
70%くらいしか作業に回らなくなる。
結果としてミスが多くなる。
現場 × 逃避メソッド的ヒント
◆ 現場で使える:
🔹 ① 「見てます」ではなく「観察してます」と伝える
人は“監視”という言葉に過剰反応する。
「効率の流れを観察するだけですよ」と言うだけで緊張が減る。
🔹 ② ベテランでもミスをする脳の正常な反応
経験年数や技術の問題ではなく、
評価ストレスがミスを生むと理解しておくだけで落ち込みが減る。
🔹 ③ ミスが多い日は「一人でやる時間」をつくる
評価の視線を切るだけでパフォーマンスは戻る。
◆ 逃避に使える:
🔹 ① SNS疲れは「評価懸念」の現代版
見られている感覚が脳を疲れさせる。
逃避とは「評価から離れる時間」のこと。
🔹 ② 誰も見ていない場所で作業すると集中が戻る
部屋を変える、カフェに行く、車に逃げる。
それでいい。
🔹 ③ 自分のペースを守れば、ミスは減る
評価ではなく流れに意識を向ける。
今日のまとめ
評価を気にすると集中が分散し、ミスが増える。
だから時々、“誰にも見られない場所”が必要になる。


